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久しぶりにパソコンをあたる事ができたので文書いてみました。
外伝的なお話。彼のお話です。
名前の漢字が読めなかったらコピペで変換してください。たぶん出ます
軽くネタバレしちゃってますがまあいいでしょう。

それではどーぞー。

何をしているのかって?下を向いて歩いているんだ。
何故かって?地面には何かが落ちているが、空から何かが降ってくることはないだろう?
俺はそんな生活を続けていた。
あの時まで。
あのしなやかに耳障りなピアノの旋律を聴くまで。

<<君をこの手に抱くことはできない そうするには僕の手は朱に塗れてしまっているから
                        行き場所のない哀れな背徳を 誰が抱きとめれる言うの?>>

一人になるといつも思い出す。
寒い、北の街にいたころのことを。

大人たちは俺たちの存在を無視する。いや、無い事とされてしまっている。
雪に埋もれるこの街の陰で、冷たい風は俺の顔を打ち付けていた。
そんな中、クズみたいな俺たちの支えとなっていた女性がいた。
「なーにしてんの、死んだ目ぇしちゃってさ。おーい、聞いてんの?×××」
回想の中の彼女は、既に捨てた俺の名を呼ぶ。
「なに、おなかすいたの?少しは我慢しなさい」
あきれた顔で俺のほうをみている。うるさい奴だった。
「考え事してただけだ」
「へー、×××にも考えるくらいの頭ってあったんだ!」
「うるさい!」
憎まれ口をたたきあう、くだらない仲。
だけど、どんなに悪口を言い合っていても、それが寒さを少しばかり和らげていたのも確かだ。

ある日、俺はいつものように下を向いてその日の飯を探していた。
腹に入るものが落ちてればそれで幸福、無いのが当たり前のようなもんだが。
それでも稀に見つかる食料を探して、やはり下を向いて歩く。
「・・・ないな」
結局食べるものは見つからなかった。やはり、今日も盗ることになるのだろうな。
あいつはやめろといっていたが、そうでもしないと生きていけない。
俺達はスラムの孤児だ。
盗みはあたり前。
「あそこはこの前やって目をつけられたからな・・あっちにするか」
狙う店に当たりを付け、急ぎその店へ向かう。
もちろん、その間も下を向いて、だ。

「さーって、どうやって盗むかな。」
物陰に隠れてチャンスを伺う。道路を挟んだこっちにもパンの香りが届く。
「・・・腹減った・・・急がないと、凍死するな」
店員が店の中へ引っ込んだ。今だ!
「こーらー。あんた、また盗もうとしてたでしょ」
走り出した俺の襟をあいつが掴んでいた。首が絞まる。
「おまえっ・・・あ、店員が・・・」
やっと開放され、店に目をやるともう店員は帰ってきていた。
「おい!なんで邪魔・・・」
あいつは文句を言おうとする俺を、あいつの手に握られたパンを翳し制した。
「半分あげるから、盗みはやめなさい」

今になって考えれば、あいつも大分無理をしたんだろう。
スラム出身というのは惨めな服装を見れば一目でわかる。
そんなクズを雇うところはそうない。
それでもあいつは必死で働き、やっと得たひとつのパンを分けてくれた。

そんなあいつを、俺は守ることができなかった。

戦争が始まった。
街の壁はいとも簡単に侵略され、たくさんの敵兵が踏み込んでくる。
「おきて、×××!逃げるわよ!」
あいつのけたたましい声で深夜に目を覚ます。
鳴り響く銃声。飛び交う悲鳴。
「これは・・・」
「戦争、とうとう始まっちゃったみたい。ここにはもう居れないわね」
寂しそうにあいつが溢したのを、何故か鮮明に思い出すことができる。
「荷物まとめて・・・って、そんなに持つものないだろうけど」
その通りだ。俺が持っていくものは、昔拾った木刀しかなかった。
「裏の壁から逃げましょ。あそこまではまだ踏み込まれてないはずだから」
そうあいつが言ったときだった。

「おい、こんなところに子供がいるぞ!」
「スラムのガキどもか・・・いい、皆殺しって令だ。やっちまえ!」

無情にこだまする爆音。
フラッシュと鼓膜を劈くような音を、今でも忘れることはできないでいる。
「×××・・・にげ」
あいつが何か言いかけたところへ、あいつらは追い討ちをかけた。
「う・・・うわあああああ!!!」
銃口がこっちへ向けられる。
強く握り締めた木刀を、恐れゆえ振りかざすことすらできない。
終わった。
そう、思ったときだった。
俺の中で、何かが目覚めた。

あれから何回か爆音があったのは覚えている。だから発砲はしたのだろう。
だがそれが俺に当たることはなかったようだ。
体を調べても銃弾はでてこないし、被弾した跡も見当たらない。
気づけば3人の兵は倒れており、そのうち1人の腹には俺の木刀が突き刺さっていた。
あのとき何があったのか記憶に無いのだ。
そこだけ、すっぽりと抜け落ちてしまっている。

騒ぎはすんなり収まった。
銃声、悲鳴が消え、静けさをとりもどした北の街。
俺はゆっくりと外へ出た。
そのとき初めて、下でなく前を向いて歩いた。
視点が違うことに違和感を覚えた。

先ほどの爆音のせいで耳がひりひりしたのを記憶している。
その耳に、あの旋律が響いてきた。
廃墟になっているはずの、教会から聞こえる。
俺の脚は、自然にそこへ向かっていた。

「やぁ。ピアノの音が聞こえたのかい?」
男は嫌な笑みを浮かべこっちを見ている。俺は無言のまま奴を見つめていた。
「君、名前は?」
「・・・×××」
それだけ小さく呟いた。だが、狭い教会には大きく反響した。
「×××・・・ね。私の名前はリーサル。君、私についてこないか?」
この男は一体何を言っているのか。
何でそんなことを言ったのか。
今でもその明確な答えを知ることはできていない。
だが、行く宛のない俺は頷いてしまった。
「そうかい、それはよかった。それじゃあ、名前を変えよう!私がもっといいものを考えてあげよう」
腕を組み、少し考える素振りを見せた後、男はそういった。
「櫨、というのはどうかな」
「・・・櫨?」
「そうだ、そうしよう。私はあの木の燃えるような紅葉が好きでね。」
嬉しそうにそう語る。
「君のその瞳。まるで櫨のようだ」

悪くない名前だった。
なによりも、今までの名前を捨てたかった。
その名を呼ばれるたびに、あいつのことを思い出してしまいそうだったから。

そうして俺は今、変な奴らと旅をしている。
もちろん、本当の仲間なんかじゃない。リーサルの令が出ればすぐにでも裏切る。
だけど・・・こいつら。
なんだか、お前に似てるんだ。暖かさが。

なぁ・・・見てるか?


Fin.


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ちょ、これすき!!!!
終わり方がよいですね!

  • とぎよ
  • 2007/10/07 7:25 PM

ありまとう(・∀・)
うれしいな!!!
またいつかがんばる!!!

  • いぬ
  • 2007/10/09 10:49 PM









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